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9月15日は本間長世先生の、10月13日は今道友信先生の命日。両先生を偲ぶ鼎談を再掲載(4)

2020年10月08日アスペンセミナー

 本間先生と今道先生を偲ぶ鼎談の最終回。
 前回の鼎談では、両先生のパーソナリティやモデレーターぶりが話題になりました。
 今回の対話は、日本アスペンの今後について発展していきます。アスペン・セミナーを支えるモデレーターをいかに育成していくか。両先生も心を砕いていたこの課題に、地道に一歩ずつ歩を進めている現状が紹介されています。そして、その歩をさらに進めるには、セミナー参加者、派遣企業など幅広い層で、アスペン精神に共感し、活動を支えてくださる方々を増やしていくことが重要です。



鼎談 リベラルアーツの魅力を広げる――本問先生、今遣先生を偲んで
会報「アスペン・フェロー」No, 24(2013年3月発行)より

小林陽太郎 ●日本アスペン研究所理事長
村上陽一郎 ●日本アスペン研究所副理事長 東洋英和女学院大学学長
松山幸雄 ●日本アスペン研究所理事 共立女子大学名誉教授
(肩書は、鼎談が行われた当時のものです)

日本アスペンの明日に向けて

編集部 松山先生から日本ではモデレーターの比重が大きいというお話がありましたが、モデレーターを育てていくことは、アスペンにとって常に考えていかなければならない課題ですね。

村上 それはもちろん本間先生も考えていらっしゃったわけですが、手を取り足を取って育てるというような方法ではなかったはずですね。一人一人の個性を大事にするという基本姿勢は崩しておられなかったと思います。ただ、いま私たちが考えていることの一つとして、必ずしもアカデミアの立場だけでなく、企業の中で経験を積まれた方で、それなりの背景を持って語れるようになる方々を何らかの形でサポートしようという試みは少しずつ進めており、アカデミアの世界以外のモデレーターも何人かお願いできるようになってきています。今後、本間・今道というとてつもない学識者を私たちは期待することはできませんから、 いろいろな形のモデレーターを発掘しながら、アスペン精神の中で働いていただく可能性を見つけたいということは考えています。

編集部 アカデミアとビジネスと、もう一つ、何か別の立場の方がいれば。

村上 本当はそれがいいんです。松山さんからアメリカでは大使級が参加していたというお話がありましたが、日本でももっとそういう方々に参加していただきたいですね。それから、せっかく松山さんという大先輩がいてくださるのに、なかなかジャーナリストの方が来てくださらない。さらに、人事院のご協力でセミナーを開いているのでそこで官僚の方々には接触できるんですが、なかなか後継者が見つからない。
 しかし新しい動きもあって、まだモデレーター候補というところまでは行かないんですが、最近では高校の先生が少しずつセミナー参加者の中に入ってきているんです。これは五年前から始まったジュニア・セミナーの副産物ですね。だから、大学というアカデミアでなくてもいいから対象者の範囲を少しずつ広げていけば、モデレーターの候補者もいろいろな豊かな、それこそリソースができるのではないかと期待しているんです。

松山 円熟したモデレーターはローマと同じで、一日にして成らずですね(笑)。長い年月をかけて育てなければならない。やはり、いろいろな方々にアスペンに参加していただき、この人ならモデレーターに向くのではないかという人を村上先生たちが選び育てていく。今道先生はいい意味でのカリスマ性を持っておられましたが、それは簡単に身につくものではありません。人を育てるということでは企業も大学も同じですね。

小林 振り返ってみると、日本アスペンはこの十五年の間、やはり本間さんと今道さんの並外れた学識、見識、パーソナリティーによって支えられてきたのは確かですね。エグゼクティブ・セミナーあるいはヤング・エグゼクティブ・セミナーに参加された方々から、こういう人に直接会って、しかも古典というテキストを通じた対話というものができたことは初めての体験だと、驚きをもって迎えられたのは間違いないと思います。
 いま、ここに両先生はいらっしゃらないわけですが、これから村上先生を中心に、アスペンに参加される日本のリーダーシップをとろうという方たちがハッと驚くようなものを持っておられる人を一所懸命見つけて、知的な刺激を今後も絶やさないようにしていくことはものすごく重要なことですね。
 そして、日本アスペン研究所がこれまでの十五年で日本の社会にどのような貢献をし、何をもたらしたのか。別に日本アスペンができたからといってリベラルアーツ熱が増したというわけではないかもしれませんが、それ以前に比べれば、リベラルアーツに対する関心は高まったのは事実でしょう。そして、本間さん、今道さんをはじめとするモデレーター、リソース・パーソン陣のお蔭もあって、従来はあまり面白いと思われていなかった古典に触れて、これはかなりいけるぞ、これまで知らなかった世界があるぞと、新たに気づき始めた人が少しずつ増えてきているのは確かだと思います。しかし、教養を磨くことは本当はもっと大切なことだったのに、多くの人たちが忘れてしまっていますね。

村上 まさにそうですね。

小林 これは非常に小さからぬ貢献だったと思うので、われわれはこれまでの経験をさらに今後の日本アスペンのプログラムに生かしていかなければいけないと思います。
 今後、モデレーターがもう少し別の方に変わっていくときに、モデレーターのパーソナリティーがもう少し別の形で生きるとか、あるいはテキストの編成や選び方に新たなものが出てくるということもあるでしょうね。

村上 アメリカのテキストブックの編集ぶりを見てハッと思ったんですが、アメリカ第三代大統領のトーマス・ジェファーソンが、自分の周囲の人たちにこれだけの本はぜひ読んでおけと、十冊から二十珊のリストを必ず書簡に添えて送っていて、『グレート・ブックス』のアイデアはそこから来ているんだとハーバードの人たちは言っていました。そのリストは、場合によってはトピックスごとに組み替えたりしながら、ある程度臨機応変にテキスト・ビルディングがされていて、そういうことがあってもいいのかもしれないという思いはありますね。モデレーター、リソー ス・パーソンの立場からすると、テキストが決まっている 方がありがたいのですが(笑)、一種のアドホックイズムを取り入れることは可能かもしれません。

松山 一つ言い忘れたのですが、さまざまなバックグラウンド、業種の人たちが集まって知的な交流をするということ自体が、日本ではなかなかないですね。自分と全然違う異業種の人たち、それはビジネスマンに限らず、アカデミズムの人だったり、あるいはNGO・NPOの人だったりと、多様な人たちが集まり、会話する。そういう意味でもアスペンはとても貴重な場で、私は最近はあまり出席しませんが、初めのころは非常に刺激を受けたものです。

村上 その点で言えば、やはり賛同して送り出してくださる企業の方々にも、御礼というかありがたいと思っているということもつけ加えさせてください。

編集部 どうもありがとうございました。

2010年1月に開催された今道先生の最後の懇話会で。今道先生のご希望で本間先生が司会を務められた。