理事長メッセージ
研究所について
このたび、日本アスペン研究所の理事長を拝命いたしました。
この重責をお引き受けするにあたり、当研究所の活動を通して培いたい人材像について、私の思いをお伝えしたいと思います。
経営リーダーに求められる「エンパシー」
これまで外資系企業の経営に加え、いくつかの企業の社外取締役、特に指名委員会の委員を務めさせていただくなかで、これからのリーダーに求められる資質について考えを巡らせてまいりました。リーダーには様々な資質が求められますが、私はそのなかでもとりわけ「エンパシー」すなわち「共感を生むリーダーシップ」を重視しています。
私たちは今、未曾有の環境変化の真っただ中におり、まさに正解のない時代に置かれています。そんな環境においてリーダーに求められるのは、組織のありたい姿を描く構想力はもちろんですが、それをメンバーや関係者に熱意をもって伝え、共感を得ていく力です。共感こそが多様な価値観を持った人材の力を結集し、必要とされる変革をけん引していく起点となるのです。共感を得ていく力は、単なる知識やスキルでは培えず、謙虚さを含む人格や人間性、自分軸を磨くことに他ならないと考えています。
古典と対話を機に内省し、リーダーシップを涵養
このようなリーダーシップを培っていくために、アスペン・セミナーが提供する「古典」との「対話」、および「内省」する機会を持つ事は、きわめて重要な土壌となります。
アスペン・セミナーに参加された方は皆、「対話」が持つ力に驚きを示されます。セミナーではまず、テキストと対話し、他の参加者と対話し、そして自分自身と対話することで、傾聴する力を育みます。傾聴を通して未知の気づきに出会い、対話の相手に感謝を示す、そういった相互作用が貴重な「内省」の機会となり、自分自身のなかに新しい認識や心構えが育まれることを、皆さん実感されるからでしょう。こうしたプロセスが現場の組織のなかで行われれば、関係者の間に共感が生まれ、さらには変革の原動力となっていくでしょう。
また、古典と向き合うことは、本質をつかみ、定石を知り、自分軸や価値観をつくるベースとなる知恵を与えてくれます。それは、自分自身の限られた知識、限られた経験、限られた思考、さらには視野の限界を超えるための叡智となるはずです。
「よく生きる」ための伴走者
もちろん、当研究所が提供するセミナーを受ければ、こうした力がすぐに獲得できるわけではなく、セミナーはいわば発射台であり、実際のリーダーシップ涵養の旅はセミナー翌日からスタートすることとなるでしょう。当研究所では、セミナー後の皆さまの思索を支えるべく、アスペン・フェローズという卒業生向けのプログラムも用意しており、皆さんの終わりのない“学び”に伴走してまいります。
私たちは、セミナーをはじめとする諸活動を通して、視座を高め、知を深め、ネットワークを広げる場を提供し、参加者の皆さんがよりよく生き、それぞれの組織でよいリーダーシップを発揮し、よりよい社会づくりに貢献されるよう、支援してまいります。
最後に、来る設立30周年へ向けて、今まで日本独自のプログラムとそれを支える優れたアカデミアの先生方のご尽力により拡大してきた重みを深く感じると共に、当研究所に時代が求める役割を真摯に受け止め進化と深化をして参る所存です。
橋本 孝之
一般社団法人日本アスペン研究所理事長
日本アイ・ビー・エム株式会社 名誉相談役(元・取締役会長)