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本間先生・今道先生のメッセージ

日本アスペン研究所が今日あるのは多くの先達のご尽力によるものです。とりわけ、本間長世先生と今道友信先生には広い視野と見識をもつリーダーの育成に向けて、溢れる情熱と卓越した知力で日本アスペン研究所の確たる礎をお創りいただきました。

アスペン・セミナーによって鍛えられる教養

本間 長世
日本アスペン研究所 元副理事長
東京大学 名誉教授
(1929~2012)

アスペン・セミナーによって鍛えられる教養は、自己の専門以外の分野についての小間切れの知識を仕入れるというようなものではありません。人間は、様々な文化ないし文明の伝統を通じて、人間存在の意味をどうとらえてきたか、それを踏まえてこれからどのような理念に向かって進んでいくべきかを考える力を養い、対話を通じて自己理解および他者理解を深めるという内容の教養なのです。その意味で、企業人に限らず、広く各界のリーダーたちにとっても非常に有用なセミナーです。

しかし、企業のリーダーたちにとってこのような意味での教養が切実に求められているのは、21世紀に入って世界は危機的状況にあり、これに対処すべき政治家の責任は極めて重いけれども、企業人もこれまでより飛躍的に広い視野に立って、人類の未来を見据えて事業を展開することを迫られているからに他なりません。

謙虚であると同時に挑戦的な営み

今道 友信
日本アスペン研究所 元特別顧問
東京大学 名誉教授
(1922~2012)

アスペン精神は哲学的な考察について対話を重ねるということです。ソクラテスは哲学について「哲学は魂の世話だ」と分かりやすく定義しています。現代人はひとりの教養人として常識的な哲学を学んでおかないと、自分の魂の世話をできなくなります。魂の世話の方法論は、哲学的な古典を読み、そこから問題を引き出し、感じたことを述べ合う方法で他者と対話を始めることが有効です。対話とは、人ときちんと向き合って、共通した問題を語り合うことです。アスペン・セミナーで使われる古典の著者は大変な学者や詩人や政治家ですから、そういう人たちの知識を土台にして、私たちが少しずつ自分を高めていき、一歩ずつでも真理に近づくことができるのではないかと思います。

一見、遠回りに見えますが、これは未来を考えるうえで必要なことです。なぜなら、人間が偏った儲け主義や国家主義、会社主義とか利己主義や帰属集団主義などに振り回されずに、人類の立場に立っていい未来をつくり上げていくよりよい学問や、よりよい事業を創造していくことにつながる規範と理念を、古典は教えてくれるからです。古典は人類の宝物ですから、セミナーでの対話を通して、それを内的に学び、そして新しい時代に、新しい未来を切り拓いていくという謙虚であると同時に挑戦的な営みができるのではないかと思います。