1. ホーム
  2. お知らせ
  3. 懇話会短信~『文明の交流と衝突:中世、十字軍から現代を見る』  東京大学 高山教授による会員限定懇話会を開催~

懇話会短信~『文明の交流と衝突:中世、十字軍から現代を見る』  東京大学 高山教授による会員限定懇話会を開催~

2019年07月25日

アスペン・フェローズの会員限定懇話会が7月23日(水)、国際文化会館で開催され、およそ40名の会員が参加されました。
今回の講師は、高山 博・東京大学大学院教授。西洋史学がご専門です。「文明の交流と衝突:中世、十字軍から現代を見る」と題して、十字軍の歴史のなかで唯一戦いによらず交渉によってエルサレムを取り戻した、神聖ローマ皇帝フリードリヒ二世についてのお話を中心にご講話いただきました。司会進行は、高山先生をご紹介いただいた、日本アスペン理事の関根清三先生にお願いしました。

dummy

十字軍というと、聖地奪還に燃えたキリスト教国の重武装軍が、隊列を組んでイスラム王朝に攻め入ることをイメージしがちですが、高山先生のお話はまさに「目からウロコ」。実は十字軍には聖地で生涯を終えることを夢見た、非武装の巡礼が多く含まれていたそうです。また、キリスト教内、イスラム教内にもさまざま利害対立があり、その対立を有利に切り抜けるために宗教を越えた連携もあったそうで、キリスト教徒vsイスラム教徒という構図で単純化して理解することが真実を掴み損ねる原因となってしまうことに気づかされました。

質疑応答では、フリードリヒ二世が知の巨人であり、かつ、外交巧者であったことも浮かび上がりました。フリードリヒ二世とイスラム側のスルタン、アル・カーミルの間では、領土をめぐるきわめて厳しい外交交渉と同時に、自然科学や哲学の難題に関する意見交換が書簡を通して行われており、こうした教養を含めた全人格的な要素が外交交渉で果たす役割についても指摘されました。
高山先生は、中世の西洋史以外にも、現代のグローバリズムについても長くご研究されており、参加者の皆さんも、「もっともっとお話を伺いたい」と思いつつ、帰途に着かれたようです。