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懇話会短信~『内村鑑三の魅力――リーダーシップの事例研究のために』 東京大学名誉教授 関根清三先生による懇話会を開催~

2019年09月09日

アスペン・フェローズ懇話会が9月4日(水)、国際文化会館で開催され、およそ80名のアスペン・セミナー卒業生が参加されました。
今回の講師は、アスペン・セミナーのモデレーターとしてもご活躍いただいている、日本アスペン研究所理事 東京大学名誉教授 関根清三先生。テーマは、ヤング・エグゼクティブ・セミナーのテクストとして著作が採用されている、内村鑑三です。司会進行は、埼玉大学名誉教授の渋谷治美先生にお願いしました。
関根先生は今年3月に「内村鑑三─その聖書読解と危機の時代」(筑摩書房)を上梓されていますが、今回は、アスペン・セミナー卒業生のご関心に合わせて、「リーダーシップ」という切り口から、ご講話いただきました。

dummy関根清三先生

ご講話では、「ルックス(容貌)」、「弁」、「頭(知性)」に始まり「愛」に終わる10の観点から、内村の魅力に迫ってくださいました。そして、それらの要素の中でも、「理想」や「信念」こそがリーダーの資質として重要ではないか、と関根先生は考察されます。
参加者には、関根先生が選りすぐった内村の美しい文章の抜粋が配布され、内村の苦悩や人生観に関する名文が、講演の進行に合わせて適宜、読み上げられました。美文の醸し出す荘厳な雰囲気が、講演をますます格調高くしていきます。

講演後半では、内村が「幸福は人生最大の得(え)有(もの)ではありません、義務は幸福に優さりて更らに貴くあります」と書き残しているように、信念に基づく公的な義務・責任を担うことを重視していた内村の姿勢が紹介されました。しかし、それに加えて関根先生は、内村はだからといって、「私」を犠牲にすることを善しとしたわけではなかった、ともご指摘されます。内村はその相克を、超越的な「愛」によって乗り超えようとしたと、関根先生は見ていらっしゃいます。合理的だが抽象に堕する恐れのある哲学と、具体的だが非合理性に陥りかねない宗教とが、互いの欠落を補い合う可能性を内村は見据えていたとのご指摘に、参加者からは大きなため息がもれました。

まさに、内村という知の巨人が、関根先生に乗り移って語り掛けているような、そんな感銘を与えるご講話でした。