1. ホーム
  2. モデレーター/セミナー参加者の声
  3. モデレーターのメッセージ

モデレーターのメッセージ

様々な体験を積んだ上で「自分を再構築する」素晴らしさ

村上 陽一郎
日本アスペン研究所 副理事長
東京大学 名誉教授
国際基督教大学 名誉教授

日本アスペン研究所の活動に関わらせていただくようになって、十年近くが過ぎました。エグゼクティブ、ヤング、そしてジュニアと、セミナーの種類も増え、扱うテキストも、それなりに大きな量になりました。永年大学務めをしている人間にとって、領域違いとは言え、当然読んでおくべきものと自分に言い聞かせていた著作も、そのなかには含まれていましたが、正直なところ、初めてぶつかったテキストも、決して無くはありませんでした。それだけでも、セミナーは、自分にとっても、毎回毎回が楽しくて、少しばかり苦しい「勉強」になっています。参加者の方々も、恐らく同じ思いをしていらっしゃることでしょう。名前は知っていても、一度も取り組んだことのない古典、それにじっくり対面し、静かに対話を交わすことは、それだけで、かけがえのない知的な喜びが得られるでしょう。教養のドイツ語は〈Bildung〉ですが、英語の〈building〉とさして変わりはありません。要するに、「自分を磨き、自分を造り上げる」ことです。もともと人間が「自分を造る」のに最も大切な時期は、青春時代でしょうが、一度社会に出て、様々な体験を積んだ上で、あらためて、「自分を再構築する」、これも素晴らしいことだと信じています。

古典は真のリーダーに不可欠な糧

猪木 武徳
日本アスペン研究所 理事
大阪大学 名誉教授

古典は、過去を振り返りつつ、読み手が新しい人間像を見いだすことのできる書物です。その古典を一緒に読みながら対話を重ね、生きた知恵を得ながら勇気や公正の精神に基づく優れた判断力を養う。そうした理念のもとでアスペンのリーダーシップ・セミナーは生まれました。ながい時を経て生き残った人類の知的遺産と向き合い、「実践的な公智」を磨くための道場なのです。

未来に向けて少しでも何かを為そうとすれば、人間にとって変わることのない真実を学ぶために、過去に目を向けなければなりません。古典には、賢者たちが見つめた人間と人間社会の秘密が語られています。私的な欲求だけで頭と心を曇らせることなく、相手の立場に身を置き、長い目で全体のことを考えることのできる真のリーダーとなるために古典は不可欠の糧なのです。